バックアップとリカバリ サービスは、大規模インフラストラクチャの管理において最もコストがかかる複雑なプロセスの部類に入ります。OpenStack の場合は、永続ブロック ストレージの効率的な割り当てと管理を行うメカニズムを Cinder によって提供しています。
OpenStack のデプロイでは、Cinder ボリュームには仮想マシンの保存中のデータが格納されるほか、OS の起動デバイスが格納される可能性もあります。本番デプロイでは、包括的なビジネス コンティニュイティおよびディザスタ リカバリ戦略の一環として、この永続データを保護することが重要です。
こうした要件を満たすため、Cinder はバックアップ サービスと共にバックアップ ドライバの仕様も提供しています。ストレージ ベンダーはこの仕様に基づいて Cinder 用ドライバを用意することで、自社のストレージを Cinder のバックアップ先としてサポートできます。
そこで私たち Google の出番です。高い耐久性と可用性を備えるクラウド スケールのオブジェクト ストレージが、サポートされるバックアップ先として加われば、企業はバックアップ先を大容量のコモディティ ストレージから、運用効率の高い経済的なアーキテクチャに移行できます。追加の設備投資は不要で、ストレージ デバイスのスケール アウトにかかわる複雑な管理に悩むこともありません。
ファイルまたはブロック ストレージにアクセスするように設計された既存のソフトウェアやシステムを、オブジェクト ストアのネイティブ REST インターフェースに対応させることは、エンジニアリング上の労力がかかるため、これまではオブジェクト ストレージを導入するうえで障害となってきました。
Cinder のバックアップ ドライバ モデルは、OpenStack ユーザーにとってのこうしたエンジニアリングの複雑さを抽象化してくれる可能性があります。適切なバックアップ ドライバがインストールされていれば、バックアップ先のストレージは想定どおりに Cinder と連携して機能します。
Google の OpenStack Cinder バックアップ ドライバは、Mitaka で提供される Cinder の標準バックアップ ドライバ セットの一部として含まれており、最小限のセットアップで動作します。1 GB、5 GB、10 GB の Cinder ボリューム サイズで、Cloud Storage 用ドライバによる Cinder のフルバックアップ機能の検証に成功しています。
また、このドライバは、管理者側でインストールを調整できるようにするため、ユーザーが構成可能な下記のパラメータを提供します。
パラメータ
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目的
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backup_gcs_credential_file
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Google サービス アカウントの JSON ファイル(ステップ 3 で Google Developer Console からダウンロードされる)のフルパス。
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backup_gcs_bucket
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backup_gcs_driver
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Google バックアップ ドライバを選択するために使用されます。
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backup_gcs_project_id
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バックアップ バケットが作成されるプロジェクト ID。
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backup_gcs_object_size
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GCS バックアップ オブジェクトのバイト数。
デフォルト : 52428800 バイト
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backup_gcs_block_size
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増分バックアップのための変更トラッキング サイズ(バイト)。
backup_gcs_object_size は、backup_gcs_block_size の倍数でなければなりません。
デフォルト : 327678 バイト
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backup_gcs_user_agent
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gcs API の HTTP ユーザーエージェント文字列。
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backup_gcs_reader_chunk_size
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GCS オブジェクト ダウンロードのチャンク サイズ(バイト)。
デフォルト : 2097152 バイト
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backup_gcs_writer_chunk_size
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GCS オブジェクト アップロードのチャンク サイズ(バイト)。-1 の値を渡すと、ファイルが単一のチャンクとしてアップロードされます。
デフォルト : 2097152 バイト
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backup_gcs_num_retries
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転送のリトライ回数。
デフォルト : 3
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backup_gcs_bucket_location
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GCS バケットの場所。
デフォルト : ‘US’
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backup_gcs_storage_class
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GCS バケットのストレージ クラス。
デフォルト : ‘NEARLINE’
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backup_gcs_retry_error_codes
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リトライを開始するための GCS エラー コードのリスト。
デフォルト : [‘429’]
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backup_gcs_enable_progress_timer
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GCS バックエンド ストレージにボリュームをバックアップするときに、Ceilometer (OpenStack のテレメトリ サービス)に進行状況の通知を定期的に送信するためのタイマを有効または無効にします。デフォルト値は True(有効)です。
デフォルト : True
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Nearline は Standard Storage と同等の高い耐久性を備え、可用性は若干低く、レイテンシは若干高くなっています。その読み込み性能は、格納されているデータ 1 TB あたり 4 MB / 秒で、データ量が多いほど高くなります。
たとえば、3 TB のバックアップ データは 12 MB / 秒でリストアできます。低コストながら高いパフォーマンスを提供する Nearline により、Cinder ボリュームを経済的にバックアップでき、必要に応じて高速にリストアできます。
OpenStack をお使いなら、バックアップとリカバリのためにストレージ システムに追加投資したり、セカンダリ データセンターを構築したりする必要はありません。Mitaka で提供される Cinder バックアップ ドライバにより、Cloud Storage はバックアップとリカバリの最適な選択肢となっています。
- Posted by Ben Chong, Product Manager and Mark Lambert, Program Manager, Google Cloud Platform