Google Cloud Platform Japan 公式ブログ: CROSS ｘ株式会社インディゾーンの導入事例 - 急なピークにも対応できる、スケーラブルなレンダーファームを Google Cloud Platform で。

CROSS ｘ株式会社インディゾーンの導入事例 - 急なピークにも対応できる、スケーラブルなレンダーファームを Google Cloud Platform で。

2015年9月24日木曜日

およそ 20 年に渡り、コンピューターグラフィックス業界の縁の下の力持ちとして活躍してきた CROSS ｘインディゾーン。黎明期はハードウェア、近年はソフトウェアを中心に取り扱ってきた同社が、今新たにクラウドを活用した新サービスを開始します。その期待の新事業に Google Cloud Platform が選ばれた決め手は果たして何だったのでしょうか？

CROSS ｘ株式会社インディゾーン ■ 事例概要 CG プロダクション向けのクラウドレンダーファーム『CROSS』を Google Cloud Platform 上で開発 ■ 利用中の Google Cloud Platform サービス Google Compute Engine CROSS ｘインディゾーンは 1996 年に設立されたコンピューターグラフィックスにまつわるプロ向けアプリケーションを取り扱う企業。日本シリコングラフィックス株式会社（現日本SGI）出身の創業者・田中一郎社長が、国内コンピューターグラフィックス産業のすそ野を広げるために立ち上げました。社名の「インディ」とはそのシリコングラフィックスのクリエイター向け低価格ワークステーション「Indy」が由来。「ハイエンドではない市場を拡大していかねばならないと考えていた」（田中社長）という想いが込められているそうです。創業当初は、当時まだ個人向けに販売されていなかった SGI などの高性能ハードウェアを、個人で活動しているクリエイターに向けて販売・リースしていた同社ですが、低価格 PC の高性能化などに伴い、徐々にメイン商材をアプリケーションに移行。3DCG 映画のトップランナーとも言えるピクサーが手がけたプロフェッショナルレンダラー「RenderMan」の国内総代理店になるなど、業界内で大きな存在感を示す企業に成長しています。そんな同社がこの夏スタートする新プロジェクトが、Google Cloud Platform を活用したクラウドレンダーファーム『CROSS（Cloud Rendering on Solution Service）』。

「3D レンダリング業界で悩ましかったのが、3DCG のデータを映像のかたちに出力するレンダリング作業を行なうコンピューティングパワーの確保。とにかく高性能なマシンが大量に必要となるのですが、繁忙期と閑散期の差が大きく、またそのピークがいつやってくるのかが分からないという問題がありました。レンダリングに特化したレンダーファームがほしいと考えても小～中規模のスタジオではそれを効率的に運用していくことができません。いつ忙しくなるかなんて分かりっこないと言うのです。製造業の世界では中小企業もこうした製造管理を普通に行なっているのですが、クリエイターにそれを求めるのは確かに酷かも知れませんね（笑）」実は数年前にアメリカの大手 CG プロダクションが相次いで倒産するという“事件”があったのですが、これも大規模レンダーファームなどを維持するための人件費・設備費に耐えられなかったことが原因と言われています。ハリウッド映画などで引く手あまただった著名スタジオが次々に閉鎖に追い込まれていったのです。「その後、それらのスタジオに在席していたクリエイターたちが小規模のプロダクションを多数立ち上げていくのですが、ここで注目されたのが汎用クラウドコンピューティングサービスをレンダリングに使うというアイデア。初めて話を聞いた時はそんなことができるのか半信半疑だったのですが、2年ほど前に実際に運用されているところを見せてもらい認識を改めました」これを受けてインディゾーンは、自社で顧客のためのクラウドレンダーファームを立ち上げることを決意。ハードウェアからソフトウェア、そして顧客のサポートまでを一社で手がけていた強みをいかし、日本市場に最適化された、日本企業によるクラウドレンダーファームを立ち上げることにしました。しかし「日本市場に最適化された」とは一体どういうことなのでしょうか？「日本の CG プロダクションは、ほぼ日常的に PC を使うようになっているものの、未だコンピュータの設定などに強くない方も多いんです。クリエイティビティ重視でエンジニアリングは後回しというか……。良くも悪くも“職人”の集まりなんですね。そこで『CROSS』では、こういった部分を我々がリーズナブルな価格でサポートする仕組みを盛りこみました。単にコンピューティングパワーだけを提供するだけでは大手には太刀打ちできません。『おんぶに抱っこシステム』とでもいいましょうか（笑）、そこが我々の強みですね」その取り組みの 1 つとしてユニークなのが、『CROSS』に接続・利用するために必要となるゲートウエイ（Mac miniを採用）をクライアントにレンタルするというアイデア。VPN や各種スクリプトのほか、クライアントが既に購入しているレンダラーと共存できるようするレンダリング管理ソフトのバンドルといった工夫も盛りこんでいるそうです。また、一般的なクラウドレンダーファームでは利用料に応じた支払いとなるのが普通ですが、『CROSS』では、サブスクリプション的なプランも検討中とのこと。これもまた、日本市場の特殊性を踏まえた上での判断と言えるでしょう。
" 急なレンダリング対応で時間を読めなくなっていた所、今回のレンダーファームのことを伺い、お願いしました。レンダリングを使いたいタイミングで使用出来る手軽さやクラウド上での PC カスタマイズの柔軟さ、コストメリットも大きく、レンダリングを投げれば時間が短縮できる安心感はとても大きかったです。” 　　　　　　　　　　　　　CROSS 事例 - 株式会社ナディア取締役 COO 半澤様「サービス開始はこの夏を予定しているのですが、現時点でゲーム業界、映画業界、CM 業界など、10 社以上のクライアントが導入に向けた検討を始めてくださっています。ただ、日本企業って目に見えないサービスを買うということをすごく怖がるんですね。また、クラウドにデータを飛ばすと流出してしまうのではないかという不安を訴える方もいらっしゃいます。でもそこは Google さんと一緒にやっているのだという説明をして安心してもらおうかな、と（笑）」半ば冗談めかせて笑う田中社長ですが、どのクラウドコンピューティングサービスを利用するかはかなり真剣に検討したそうです。「当初は、どのサービスにもそこまでの差はないだろうと思っていたのですが、実際にいろいろ試してみると思っていた以上に違いました。特にスケーラビリティの柔軟性では Google Cloud Platform が素晴らしかった。課金単位が分単位というのもうれしいところ。他社では 1 時間単位だったり、1 か月後にならない集計できなかったりしますからね。あと、サービスのコンフィギュレーションがメディア業界に向いているとも感じています。クラウドレンダーファームのようなメディア系のサービスは一般的なトランザクション系とはだいぶ性質が異なるので、そこにマッチしたものをセレクトできるのはありがたかったです。これは Google さんが、自分たちでもクラウドレンダーファーム「Zync」を運営していることも関連しているのかも知れませんね」

その目標は高く、まずは国内に約 300 社ある全ての CG プロダクションに使ってもらうことだと田中社長は語ります。「今後、レンダリングの需要は増えることはあっても、減ることはありません。しかし、そこに向けて自社内でレンダーファームを抱えるというやり方はもう古い。間に合いませんし、投資も割に合いませんからね。今後はそれをスケーラブルに利用できるクラウドレンダーファームが主流になっていくでしょう。当然これから多くのライバルがあらわれてくるでしょうが、我々が 20 年に渡って積み上げてきたノウハウは小さくないと考えています。実際、トラブルのほとんどはテクニカルなものよりも、ヒューマンエラーだったり、規格、レギュレーション的なもの。これまでそれらに向き合ってきた強みをいかし、Google さんと一緒に事業を拡大していければと思っています」導入事例はこちら