Google Cloud Platform Japan 公式ブログ: 株式会社グラニの Google Cloud Platform 導入事例: 「using CSharp;」という軸と BigQuery の活用で、先進性を求め続ける。

株式会社グラニの Google Cloud Platform 導入事例: 「using CSharp;」という軸と BigQuery の活用で、先進性を求め続ける。

2015年12月2日水曜日

『神獄のヴァルハラゲート』や『モンスターハンターロアオブカード』など、多数の人気ソーシャルゲームを開発・運営する株式会社グラニ。スマートフォンアプリの中でも特にトラフィックの多いと言われるこれらのゲームでも Google Cloud Platform は活躍しています。

■ 事例概要ソーシャルゲームにおけるログ解析に Google BigQuery を利用し、障害分析やユーザーの行動分析を行う。 ■ 写真左から株式会社グラニ開発本部インフラ部　エンジニア　田中孝佳さん取締役 CTO　河合宜文さん開発本部インフラ部　部長　齋藤龍一さん ■ 利用中の Google Cloud Platform サービス Google BigQuery, Google Cloud Storage 六本木ヒルズに大きなオフィスを構える株式会社グラニですが、実はまだ起業してから約 3 年という若い企業。会社を興した当時は人数が少ないこともあり、ゲーム内容の充実が再優先で、データ分析などはどうしても後回しになっていたと、創業初期からグラニに関わってきた同社 CTO（最高技術責任者）の河合さんは振り返ります。「会社が大きくなって、やっと余裕ができてきたのがちょうど 1 年くらい前。ユーザーの皆さんにより楽しんでもらうため、いよいよデータ分析を本気でやっていこうということになりました」

そこでまずグラニが選択したのが業界大手のデータ分析サービス。しかしこれはグラニが求めていたものと違っていました。

「クラウドの良いところは手間がかからず、全てがきちんと管理されていることだと思うのですが、そのサービスはよく言えば自由度が高く、悪く言えばチューニングすることを前提に作られており、とにかく考えることが多すぎました。そんな中、出会ったのが Google BigQuery だったんですよ」（河合さん）河合さんが BigQuery に触ってみて一番感動したのは、何より簡単で速いこと。「使い勝手の良い強力なウェブコンソールがあり、クエリも標準 SQL に近い慣れ親しんだものなのですぐ始められる。性能面でも、クラスター構成などを悩む必要もチューニングなどを考える必要もなく、圧倒的に速い。おまけにストレージなどコストまで安い。気軽なのに他を圧倒的に凌駕する速さ、BigQueryにクラウドサービスの真髄を見ました。」

これには開発本部インフラ部のリーダー齋藤さんも同意。「ソーシャルゲームは性質上アクセス数が多くなりがちで、ユーザーが 1 回ボタンを押すだけで 20 ～ 30、あるいはそれ以上のログが発生することも少なくありません。結果的に巨大なデータセットに対して分析を行うことになります。分析でクエリを書く多くのシーンにおいて、『とりあえずクエリを書き始めて実行、その後、結果を見ながら求めているデータに近づけていくためにTry & Error を繰り返す』という作業を繰り返します。そのため『毎回毎回実行に3分かかります』では大変効率が悪いし、テンポが悪いと使う側も萎えてしまうわけです。」では具体的にはどのようなシーンで BigQuery が使われているのか？　まず最初に導入されたのは障害時やサービスのレスポンスタイムが悪くなっている時の原因分析でした。それまでグラニは他のログ解析サービスを利用していたそうなのですが、解析に使うクエリの文法が独特のものだったため、社内でも使いこなせる人が多くないことが悩みの種に。河合さんは CTO として全てのエンジニアが障害分析に携わるべきと考えているのですが、そのハードルが最初の時点で高かったのです。その点、BigQuery は使いやすいインターフェイスと、標準 SQL 規格に近い構文を使っているので誰でもすぐに使いこなせ、しかも膨大なログデータも瞬時に処理してくれる点が河合さんの理想に合致。障害が起きたとき、すぐに原因を特定できるようになったと言います。そして、次にユーザーの行動分析に対して活用を始めました。「実はこれまで、グラニではゲームの機能改善にそういったデータは最低限しか利用してこなかったんですよ。どちらかというプランナーの経験だったり、ユーザーの盛り上がりや、挙がってくる声を重視してきた傾向にありました。理由としては、最低限以上のデータの活用はコストパフォーマンスに優れないと思っているから。ヒューマンリソースやスキルレベルなどの環境にもよるとは思いますが、時間をかけて取得したデータで、それまでにかけたコストに見合う分だけの価値を生み出す、というのはとても難しいことだと思います。5 分で分析したデータと 1 日かけて分析したデータが指し示せるものには大差が無いことはよくある。ということはデータ分析をしたことがある方なら理解いただけるのではないかと思います。

そのためデータ分析はあくまで最小限に留め、そこにプランナーの経験値とユーザーの声を掛け合わせることが最大のパフォーマンスだと思って今までを運用してきています。 BigQuery 導入にデータ分析のコストも大きく下がってきたと思っているので、今後はもっとデータ分析を活用して、プランナーの判断を定量的な面からサポートできるようにしていきたいと考えています。」（齋藤さん）

「ほか、インフラエンジニアとして気に入っているのが弊社の Web サーバーから BigQuery にデータを Web API で投入できるストリーミングインサートという機能。

多数のサーバーから大流量のデータを投入しても、ほぼリアルタイムでクエリ結果に出てくることに驚きました。」（開発本部インフラ部エンジニア田中孝佳さん）さて、ここで、グラニが他社と大きく異なっている点が1つあります。それは、開発言語にマイクロソフトが開発した「C#」を利用していること（そしてそのためにWindows を開発機にしていること）。それを会社ぐるみで前面に押し出していること。しかも聞くところによると何と、河合さんも田中さんもマイクロソフトからマイクロソフト技術に関連して表彰を受けた国内で 200 人程度しかいないマイクロソフト MVP(Microsoft Most Valuable Professional) なのだそう。グラニの採用情報ページにも同社の C# へのこだわりが強く打ち出されています（グラニには C# の MVP が何人も所属）。「C# と BigQuery の組み合わせには、強い可能性を感じました。C# にはもともと LINQ という強力なデータアクセスのための技術があり、それを BigQuery と合わせたら凄いことになるという確信がありました。とはいえ、まだ C# と BigQuery との組み合わせの事例は、海外を含めてもほとんどありません。そこで、自分で BigQuery のライブラリ - LINQ to BigQuery を作り、OSS として公開しました。これにより、多くの人が C# と BigQuery の可能性について気付いてもらえたら嬉しいですね。 BigQuery は、単純に素晴らしいサービスであるということにとどまらず、UDF をはじめとして今でも発展しており未来を感じます。C#もまたオープンソース化したコンパイラ(Roslyn)をはじめとして、進化し続けています。C# やBigQuery など、素晴らしい技術を駆使することで生まれる先進性が、我が社の競争力になるのだと考えています。」（河合さん）