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Google Cloud

医療を変えるクラウドのデータ、アナリティクス、機械学習

2019年3月4日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2019 年 2 月 12 日に Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

電子カルテから医療画像まで、医療業界はかつてないほど多くのデータを有しています。私たち Google Cloud は、こうしたデータを治療の進化と業務の合理化に活かして医療の画期的な発展につなげようとする医療機関を支援したいと考えています。この 1 年、私たちは医療を念頭に置いて、Google Cloud のサービスを拡充し、コンプライアンスの対象を広げ、新しいお客様やパートナーを迎え入れてきました。本稿では、その過程でのマイルストーンを振り返ってみます。

Google Cloud を新たに導入した医療機関の取り組み

医療が抱える課題は、次第にデータの課題になりつつあります。有意義な知見を得るためのデータの作成、格納、解析ということです。私たちはこの 1 年で多くの医療機関を Google Cloud のお客様として迎え入れましたが、そうした医療機関が患者と医療提供者のためにデータを活用していることに大きな刺激を受けました。事例をいくつかご紹介します。
  • 米国国立衛生研究所(NIH)は、STRIDES(Science and Technology Research Infrastructure for Discovery, Experimentation, and Sustainability)イニシアティブの一環として、生物医学研究に Google Cloud のパワーを活用しようとしています。Google Cloud は、この取り組みにおける産業界初のパートナーとして、NIH が築いてきた最も重要なデータセットの一部を適切なプライバシー管理のもとでユーザーに公開し、データセットへのアクセスの簡素化を支援しています。
  • BARDA DRIVe Solving Sepsis イニシアティブは、エモリー大学医学部、マサチューセッツ総合病院(MGH)、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医学部、アトランタの Grady Health System からなる研究コンソーシアムと協力し、集中治療室での敗血症の早期予測のための相互運用可能な学習ソフトウェアを Google Cloud を活用して開発しています。米国では毎年 27 万人もの患者が敗血症で死亡していますが、DRIVe はその削減に向けて、このプラットフォームの開発や実装を支援できる体制を整えています。
  • Hurley Medical Center は、業務効率化やコスト削減、患者転帰の改善に向け、オンプレミスの作業補助ソフトウェアとメールから G Suite への移行を進めています。これにより、同センターは年間のソフトウェア コストを 15 万ドル削減しました。
  • Hunterdon Healthcare は、G Suite を使ってコラボレーションを改善し、業務の効率化を推し進めた結果、この 3 年間で介護士の時間の 30 % を患者の介護のために取り戻すとともに、コストを 130 万ドル削減しました。
  • Imagia は、画像データによる患者転帰の予測やマーカーの検出の支援という基幹業務のために Google Cloud Platform(GCP)を活用しています。GCP の導入により、検査処理にかかる時間を従来の 16 時間から 1 時間へと短縮し、研究者のための問題検出時間を改善しました。
  • Wellframe は、患者と医療チームの信頼関係構築を支援して早期医療介入につなげるプラットフォームの強化に GCP を使っています。Wellframe プロバイダーは、ケア インテリジェンスの自動化によってケア デリバリーを拡大し、ケア戦略を最適化できるようになりました。すでに、患者の週間ケア プランへの関与が 80 % 増加しています。

これらをはじめとする医療機関や医療分野の企業が、最も重要な課題の解決のためにデータを活用していることを、私たちは非常にうれしく思います。

より良い患者転帰のためにパートナーと協力

Google Cloud のパートナーは、医療機関や医療提供者がクラウド戦略を採用し発展させていくうえできわめて重要な役割を果たしています。そこで私たちは、データ相互運用への取り組みを加速させるべく、複数の企業や組織と新たなパートナーシップを結びました。

  • 医療データの国際的な標準策定機関である Health Level 7(HL7)とのパートナーシップは、FHIR Foundation との既存の実績を基に、HL7 が管理するさらに広範な標準規格を対象に組み込むというものです。標準策定委員会には Google の代表者が参加しています。
  • 電子カルテに直接組み込まれるアプリケーションの開発を促進する SMART Advisory Council とのパートナーシップにより、Google Cloud の開発者たちは、SMART 仕様を改良するにあたって意見を共有できるようになります。また、アプリケーション設計者や技術者、およびユーザー向けの堅牢なツール セットのメンテナンスも支援します。
  • 私たちは、デジタル ヘルスの調査とベンチャー企業支援のリーダー企業、Rock Health のパートナーとして、新興企業が必要とする連携要件を取り入れるとともに、世界規模でコンプライアンスに適合したスケーラブルな製品を開発するためのベスト プラクティスをシェアします。また、デジタル ヘルスの未来の形成に携わる投資家や業界幹部、規制当局、国会議員、学識経験者らと意見交換を進めていきます。
  • 連邦政府の資金提供を受けた研究開発センターを運営する非営利組織、MITRE は、Google Cloud と協力して、Cloud Healthcare APIApigee Edge を介した SyntheticMass へのアクセスを開発者に提供します。SyntheticMass は、マサチューセッツ州のリアルでありながら架空の住民たちの FHIR 形式データを全人口レベルで集めたデータセットです。人口統計、疾病負担、予防接種、訪問診療、社会的決定因子について実際の母集団を統計学的に反映したリスクフリーな環境になっており、新しい治療方法の実験や探索に使用できます。SyntheticMass は、患者の病歴をモデル化するオープンソースの人工患者データ生成システム、Synthea を使って生成されています。このFHIR データセットは近く開発者に公開される予定です。

私たちは、医療エコシステムに属する他の技術パートナーとも協力関係を結び、大きな成果を上げています。

  • Novo Nordisk は、糖尿病患者向けのデジタル ヘルス システムの構築と運用、および数百万台に上るスマート医療デバイスとそのデータの規制に準拠したセキュアな管理のために、GCP にホスティングされている医療用の BrightInsight platform を選びました。
  • Flywheel は、マルチモーダリティ画像とデータのキャプチャや、データ分類の生産性向上、分析とメタデータの管理のためのセキュアなコラボレーションを実現するため、自らのプラットフォームと BigQuery、AutoML VisionGoogle の Healthcare API を連携させています。
  • Life Image とカリフォルニア大学の Athena Breast Health Network は、乳がんスクリーニングの最適な頻度と方法を明らかにしようとする画期的な研究、WISDOM Study のために GCP 上の Mammosphere を選びました。Life Image では、ケア システムと Google Cloud 上のアプリケーションとのギャップを埋めるため、Cloud Healthcare API も利用しています。
  • 医療用 IT セキュリティの Imprivata とのパートナーシップにより、Chrome デバイスは、Imprivata の医療用シングル サインオンおよび仮想デスクトップ アクセス プラットフォームとシームレスに連携できるようになりました。これにより、セキュアなモバイル ワークステーションと患者用デバイスを実現できます。
  • Elastifile は、フルマネージドのファイル ストレージ サービスである Elastifile Cloud File Service をリリースしました。スケーラブル、ハイパフォーマンス、従量課金制のファイル ストレージの導入により、医療機関は、データ集約型の NFS ワークロードを Google Cloud に任せることで処理を高速化することができます。

Google プロダクトでデータの力をフルに引き出す

私たちは、医療関連のサービスを拡充し、お客様の製品提供をお手伝いするチャンスを常に探しています。たとえば、多くの医療機関は、データの課題に協力して取り組んだり、新しいソリューションや予測モデルをすばやくイテレートしたりするための手段として “datathon”(データソン)を開催しています。そこで私たちはこの活動を支援するため、データソンのためのセキュアなコンピューティング環境を提供する Healthcare Datathon Launcher を発表しました。また、臨床分析の方法を学びたい方には、コロラド大学アンスチャツ メディカル キャンパスが Coursera で開講したばかりの Clinical Data Science 専門講座がお勧めです。この専門講座には 6 つのコースがあり、Google Cloud を実際に体験することができます。

さらに私たちは、この 1 年で医療関連サービスをさまざまな形で強化しました。たとえば、研究者向けに Cloud Healthcare API と放射線医学データセットを公開したり、The Cancer Imaging Archive(TCIA)と NIH の 70 以上の一般公開データセットをホスティングしたりしています。これらのデータセットを使って GCP で分析ワークロードを実行すれば、IT インフラストラクチャや管理のことを気にせずに、仮説の検証や実験を行えます。

医療提供者のセキュリティとコンプライアンスを支援するために

セキュリティとコンプライアンスは、医療提供者にとって基本的な関心事であると同時に、Google Cloud における最優先事項の 1 つでもあります。今までに、Compute Engine や Cloud Storage、BigQuery を含む 36 以上の GCP プロダクトとサービスが HIPAA コンプライアンスに対応しました。Apigee Edge と AutoML Natural Language は、その中で最も新しいものです。GCP と G Suite は HITRUST CSF 認証も取得しており、Google Cloud では GDPRPIPEDA などの規制に準拠するための取り組みも進めています。最近では、NHS 情報ガバナンス要件の概要を記したホワイトペーパー『Handling Healthcare Data in the UK』(英国での医療データの取り扱い)を公開しました。

最後に、Google Cloud の医療ソリューション責任者である Aashima Gupta が、この分野での貢献を認められ、HIMSS(Healthcare Information and Management Systems Society)において 2019 年度のヘルスケア IT に最も大きな影響を与えた女性賞の一人に選ばれたことをご報告いたします。

- By Gregory J. Moore MD, PhD, Vice President Google, Google Cloud Healthcare & Life Sciences, Google Cloud

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