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株式会社ファームノートの導入事例:Internet of Animals の実現を GCP が強力にサポート。牛の発情・疾病の迅速な検知で発情発見率を大幅に向上。

2018年5月9日
Google Cloud Japan Team

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クラウド、スマートフォン、ソーシャルを活用することで、スマート農業ソリューションの実現を目指す「純十勝産」の IT ベンチャーである株式会社ファームノート。クラウドと機械学習を活用した牛向けウェアラブルデバイスのハードウェアの設計・開発から、ソフトウェアのクラウド実装、機械学習のアルゴリズム開発までを担当した 3 人のエンジニアに、その取り組みについて話を聞きました。

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■ 写真左から

デバイス開発 河野 信輝氏

エンジニア 吉田 理貴氏

デバイス開発マネージャー 阿部 剛大氏

■ 利用している Google Cloud Platform サービス
Google Compute EngineCloud DataflowCloud Pub/SubGoogle Cloud StorageCloud DataprocBigQueryCloud DatastoreStackdriver Monitoring など

株式会社ファームノート
スマート農業ソリューションを提供する IT ベンチャーとして、2013 年 11 月に設立。クラウド、スマートフォン、ソーシャルなど、最先端の技術を駆使し、「世界の農業の頭脳を創る」というコンセプトに基づき、誰もが同じ品質で酪農・畜産経営ができる世界の実現に取り組んでいます。

GCP への移行でコスト 6 分の 1 を実現


2013 年 11 月、北海道の十勝から世界に通用する会社を作るという強い想いで設立された株式会社ファームノート。「牧場を、手のひらに。」というビジョンに基づき、クラウド型牛群管理システム「Farmnote」、およびクラウドと機械学習を活用した牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」を開発・提供することで、酪農・畜産経営の効率化と日本の農業の強化に貢献することを目指しています。

Farmnote は、牧場に関わるあらゆる情報を、「手書きのノートのように簡単に」扱えるようにしたいという想いから生まれました。一方、Farmnote Color は、牛の発情や疾病兆候を、クラウドを介してスマートデバイスに通知することで、最適な飼養管理を実現することを目的としています。この 2 つのサービスは、Internet of Animals の具現化に向けた、センシング技術の開発や機械学習の活用の一環といえます。

Farmnote Color は、加速度センサーなどを内蔵したデバイスを牛の首に装着し、一度飲み込んだ食べ物を口に戻して再度飲み込む反芻など、牛の活動データをリアルタイムに取得して、Farmnote Air Gateway に送信します。Farmnote Air Gateway は、受け取った牛の活動データを、クラウドに配信します。クラウドに蓄積されたデータは、Farmnote と連携することで、スマートデバイスから容易に確認することができます。

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ウェアラブルデバイス Farmnote Color

Farmnote Color について、同社のデバイス開発マネージャーである阿部 剛大さんは、次のように話します。「Farmnote Color で取得したデータは、クラウドに保存され、活動量、反芻時間、休憩時間が計算されます。計算結果を機械学習で分析し、繁殖で重要な発情、疾病兆候など注意すべき牛を自動的に選別して、Farmnote がスマートデバイスに通知します。これにより、牛を常に監視しておく必要がなくなり、作業の効率化が期待できます。」

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当初、Farmnote Color では、データを蓄積し、分析するためのクラウドに、他社のサービスを利用していました。同社でデバイス開発を担当する河野 信輝さんは、「2016 年 8 月に、Farmnote Color をローンチし、その後、予想以上にユーザーが増えたため、クラウドへの負荷が増大しました。当時、利用していた他社のクラウドサービスは、1 時間単位の課金体系だったため、無駄なコストが発生してしまうという課題がありました。」と話します。

「いくつかのクラウドサービスやオンプレミスでの運用を検討した結果、Google Cloud Platform(GCP) を採用することが最適だと判断しました。GCP は、1 分単位の課金体系だったので、1 回のジョブごとにインスタンスを立ち上げ、ジョブが終了したらインスタンスを落とすことで、他社のクラウドサービスに比べて、コストを 6 分の 1 程度に低減できることが最大の決め手でした。」(河野さん)

コスト削減の別の側面として阿部さんは、「現在の発情の監視はバッチ処理で行っています。しかし今後、分娩や急病などを監視する場合、今まで以上にリアルタイム性が求められます。そこで、どうしても Cloud Pub/Sub を使いたいと思っていました。バッチ処理からストリーム処理に移行する場合にも、 Cloud Pub/Sub にストリームでデータを流し、 Cloud Dataflow で処理する形で手軽にできます。この仕組みを GCP 以外で実現するのは、コスト的に見合いませんでした。」と言います。

データ収集や分析を G Suite と GCP でシームレスにコラボレーション。さらに機械学習により発情発見率を大幅に向上したケースも


Farmnote Color のクラウドとして、GCP を採用した効果に、G Suite との連携があります。同社のエンジニアである吉田 理貴さんは、次のように話します。「他社のクラウドで、複数のプロジェクトに権限を設定する場合、プロジェクトごとの権限設定が必要でした。G Suite との連携により、G Suite のアカウントの権限設定だけで、すべてのプロジェクトの権限を容易に管理できます。例えば、チーム内でさまざまなデータが欲しいという要望があるのですが、重要なデータを受け渡す場合、毎回上長の承認が必要でした。GCP は、必要最低限の権限を簡単に付与できるので、上長への承認が減り、作業時間を削減できました。」

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また、エンジニアとエンジニアではない担当者のコラボレーションが楽になったことも効果の 1 つです。「営業担当者に、酪農家のデータを Google スプレッドシートに入力してもらい、酪農家ごとのマスタデータを作成します。エンジニアは、マスタデータから必要なデータを BigQuery で抽出し、牛の活動データと結合して分析する作業が簡単にできます。ウェブアプリや Excel のアップローダーを開発したのでは、今のスピード感は実現できませんでした。」(河野さん)

さらに、Farmnote Color の在庫管理や出荷管理など、バックオフィス業務でも、Google スプレッドシートや Google Data Studio などが使われています。河野さんは、「エンジニアとビジネス側の担当者のかけ橋となるサービスは、他社のクラウドにはありませんでした。システム開発からデータ分析、バックオフィス担当者や酪農・畜産家とのやり取りまで、1 つのインタフェースでできるので本当に便利です。」と話します。

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技術面の効果を河野さんは、こう話します。「Cloud Dataflow は、特に素晴らしいと感じています。この機能は他のクラウドサービスでは実現できません。リソース管理も楽だし、ジョブの実行状態の監視も標準で使えます。Stackdriver Monitoring とも連携しているので、アラートも簡単に受取ることができます。GUI も直感的で、個人的には、他の分散処理フレームワークに比べて、コードの書き方も気に入っています。」

次に、GCP のサポートについても河野さんは、次のように話します。「さまざまな問い合わせに、短期間で回答してもらえているので、非常に感謝しています。新しいサービスが出たときも、気軽に問合せできるので助かっています。」

一方、酪農・畜産家のメリットを阿部さんは、次のように話します。「どんなに優れた酪農・畜産家で、勘と経験が優れていても、夜は眠らなければなりません。24 時間 365 日、牛の活動データを収集することで、より収益性の高い作業に注力することができ、これまでの勘と経験による経営が正しかったことを裏付けることもできます。また、農業を次世代に引き継いでいくためのデータを蓄積できることもメリットです。」

Farmnote Color を利用することで、発情発見率が大幅に向上した事例はいくつもあります。酪農・畜産家は、自分の農場の状況しか知らないことが多く、何かを判断するときに、それが正しいのか、正しくないのかが分かりません。しかしデータを活用することで牛の活動を可視化し定量的にモニタリングをすることで判断材料を得ることができます。

「Farmnote Color は、計画よりも早く出荷台数が伸び、データ量が増えているので、他社のクラウドのままだと、コストが今の 10 倍になっていたかもしれません。運用面でも、運用担当者がもう 1 人必要でした。また、GCP に移行したことで、予想以上に台数が伸びても、Cloud Dataflow が最適にスケールしてくれるので、急にシステムが止まって、お客様に迷惑をかけることもありません。“ビッグデータの活用に取組む” という、普通にやると大変なことを簡単にできるのは、GCP のおかげです。」(阿部さん)

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