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株式会社リクルートライフスタイルの導入事例:GCP ならではのフルマネージドサービス群で膨大なデータ処理と、将来の拡張性を両立

2018年1月30日
Google Cloud Japan Team

株式会社リクルートライフスタイルが 2013 年 11 月にリリースした、iOS 向けの無償アプリ「Airレジ」は、タブレットを高価な POS レジの代わりに使えるようにしてくれるという、中小の飲食店にとって夢のようなアプリです。安価なだけでなく、高性能なこともあって、わずか 3 年半で約 30 万アカウントものユーザーを獲得するに至っています。そんな同社が、今年、さらなる飛躍を目指した新たな取り組みを発表。「Google Cloud Platform がなければ実現できなかった」という、その新プロダクトの開発ストーリーをご紹介します。

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■ 利用している Google Cloud Platform サービス
BigQueryCloud DataflowGoogle Cloud StorageGoogle App Engine など

株式会社リクルートライフスタイル

リクルートグループ傘下企業として、旅行領域、飲食領域、美容領域、ヘルスケア領域、通販・割引チケット共同購入サービス、その他日常消費領域に関わるカスタマーの行動支援およびクライアントの業務支援・決済サービスを提供。Air事業ユニットでは「Airレジ」のほか、電子決済サービス「Airペイ」なども開発・運用している。

飲食業界に最新のデジタル経営技術を持ち込みたかった


「Airレジを中心とした、Airシリーズ製品群は、『商うを、自由に。』というビジョンのもと、中小店舗経営者の皆さんの負担を減らし、自分らしいお店づくりの実現をお手伝いすることを目的に開発・提供してきました。今回、新たなプロダクトとして提供させていただく『Airメイト』は、それをさらに次のフェーズに進める取り組みなんです。」

と語ってくださったのは、Airレジの生みの親の 1 人にして、Airシリーズの事業を率いる、株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 Air事業ユニット ユニット長の山口 順通さん。Airレジは、企画当初から「レジ」を安価に提供するのが最終目的ではなく、“その先” を見据えたプロジェクトだったのだそうです。

そして、その開発の中心人物が、同社に入社したばかりという甲斐 駿介さん。大学在学中、19 歳の時に友人と一緒に飲食店の経営を始め、並行して Google でのインターンも経験していたという若きエンジニアです。

「飲食店の経営と Google でのインターンシップを同時に体験して思い知ったのが、経営に関する両社の余りに大きなギャップです。Google の誇る、世界最高レベルの経営ノウハウとテクノロジーをごくごくわずかでも飲食業界に持ち込むことができれば、業界全体の生産性が劇的に向上するという確信を持ちました。」(甲斐さん)

卒業後、一昨年 10 月末にリクルートライフスタイルに入社した甲斐さんは、その “確信” を、リクルートがさまざまな業界に対して蓄えている知見・ノウハウ、そして Airレジが蓄積した膨大なデータを活用することで、現実のものにしようと動き始めます。そして、いくつかの実験を経て、2017 年 9 月に『Airメイト』の β 版が完成しました。

「『Airメイト』では、タブレット(iOS 対応端末)の画面上に店舗の状況が一目で分かるマトリクスや、売上、利益、客数、客単価、FL 比率⦅ F=food(原価、材料費)、L=Labor(人件費)の合計を売上高で割ったもの⦆という飲食店経営において最も重要とされる 5 つの情報を手軽に確認できるようにしています。これらの数値は Airレジの会計情報や、リクルートの保有するエリア情報などを集計することで算出。今までの飲食店ではこうした情報を年に 3 回も出せれば良い方だったのですが、Airレジを導入することで、毎日、自動的に最新の情報を確認できます。また、もう一つ革命的なのが、AI を駆使した目標達成率の予測機能を搭載していること。月の半ばくらいで、月末の状況が予測できるようになるので、早い段階で手を打てるようになります。」(甲斐さん)

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メニューごとの注文率などの分析も BigQuery で自動集計

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集客分析は Dataflow を活用しスケーラブルに実現

そして、ここで最も大切なのが、こうした情報をオーナー、エリアマネージャー、店長、そしてリクルートの営業が、全く同じように確認できること。タブレットの画面上に表示された情報を共有し、それを前提として、勘だよりではない、数字に基づいた現実的な施策(メニュー開発や、接客の改善、広告展開など)を話し合えるのです。これによって、飲食店経営の常識が根本的に変わるのだと甲斐さんは胸を張ります。『Airメイト』とは、旧態依然とした経営プロセスの上で動く「ツール」なのではなく、飲食業界に、最新世代のデジタル経営の基盤を持ち込むことで実現する新たな「仕組み」なのです。

「個人的に予想外だったのが、20 代前半の若い店長が『Airメイト』をゲーム感覚で抵抗なく使うことができる、と楽しみながら優れた経営感覚を身につけ始めたこと。これまで若手スタッフに不足しがちだった経営者意識を持たせる効果もあるようですね。」(甲斐さん)

やりたいことと GCP が得意とすることが見事にマッチ


なお、『Airメイト』では、取り扱うデータが膨大な量になることから、早い段階で Google Cloud Platform(GCP) の採用が決定していたそうです。その理由について、甲斐さんは「大きなデータの取り扱いについては、Google に一日の長がありますからね。また、弊社のエンジニアには新しい仕組みを作るのは好きだけど、それを地道に運用していくのは面倒だという者が多いので、そういう意味でもマネージドサービスの充実している GCP との相性は抜群でした(笑)。」と笑いながら説明してくれました。

なお、BigQuery や、Cloud Dataflow などのマネージドサービスを多用した背景には、将来的な事業拡大を意識したという側面もあるそうです。

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Airメイト システムアーキテクチャ

「こうしたデータプロダクトは、基本的に見られる情報が決まりきっているので、あらかじめ裏でバッチを回してデータを準備しておくのがセオリー。今回は、それをフルマネージドの環境で構築することで、後々クライアントが 20 万件になっても、100 万件になっても耐えられるようにしています。また、もう 1 つ意識したのが、このサービス基盤をポータビリティのある形で作りあげること。今後は、旅行だったり、美容だったり、さまざまな業界に拡げていくことも考えています。そして、そのために誰でも簡単にデータプロダクトが作れる設計を心がけました。一般的にデータプロダクトを作るにはビッグデータ基盤と、それを移動するための ETL ツールや移動を管理するためのワークフローエンジンが必要になります。しかし、これらをエンジニアが自社事業にとって価値の高いビジネスロジックの開発にフォーカスできるように、開発・運用するのは骨が折れます。それがフルマネージドでスケーラブル、またビッグデータ処理関連のツールが豊富な GCP を使うことで、ビジネスロジックやプロダクト開発に集中でき、たった 4 人のチームで 3 ヶ月で開発をすることができました。こんな事は Google でしかできませんね。」(甲斐さん)

なお、気になる一般への提供開始は、2018 年春から申込みを開始予定とのこと。良いものができた自信はあるそうなのですが、対応デバイスの拡大(現在は iOS 対応端末 のみ)や、管理部門の情報ツールとの連携機能の追加など、まだまだブラッシュアップする余地があるのだとか。また、今年夏頃から、より大きな実証実験を行い、本当にクライアントの利益アップに貢献できるのかなどといった、より実際的な検証も行っていく予定ということです。

また、基本機能の開発は一通り終わったものの、今後の機能追加にも意欲的。具体的には機能の検証のために Google Stackdriver を活用し、細かく取得した利用ログから意味のあるものだけを抽出して、そこから店長のタイプを機械学習を駆使して深く分析・レポートする内部向けの機能を検討中とのこと。「お客さまからの要望を対面でお伺いすることももちろん大事なのですが、こうしたデータ分析も大事。この両輪でさらなる機能強化をはかっていきたいですね」と甲斐さんは言います。

「その後の本サービスは有料での提供となる予定ですが、まずはより多くの店舗、企業に使っていただけることを一番に考えています。リクルートは全ての業界で不足している「人」「金」「不動産」全てを事業として持っています。『Airメイト』の使命は、各社の経営状況を可視化していくことで、そうした繋がりを強化していくこと。そこから、次の一千億ビジネスを生み出していきたいという想いもあるんですよ。」(甲斐さん)

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